「アフガニスタン人98人が難民認定」のニュース、おめでとう!だけではない理由 [代表コラム]
日本に逃れてきたアフガニスタン人98人が、日本で難民認定されたというニュースが、様々なメディアで報じられています。
年間の難民認定が、昨年74人だった日本での「一斉」「大量」の難民認定。
今月、日本で初めて、トルコ出身のクルド人が難民認定されたニュースに引き続き、難民に関するニュースとしてはまた大きなものとなります。
アフガニスタンでは、2021年8月にイスラム主義組織タリバンが首都カブールに進攻し、2021年8月16日、政府に対する勝利を宣言した一方、ガニ大統領は出国し、政権は事実上崩壊しました。タリバン統制下のアフガニスタンでは、中等教育から女子を排除したり、「道徳」警察の恐怖支配など、重大な人権侵害が報告されています。
「認定されるなんて奇跡に近いから・・・」と当事者たちまでもが口にする日本での認定。基本的には歓迎すべき流れなのです。その上で・・・
何点か大切なポイントを、押さえておきたいと思います。
認定されたのはアフガニスタンの日本大使館で働いていた現地職員とその家族ら計98人
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ということで、大使館員ではなかったけど、身の危険があって逃れてきている様々な職業(元日本のNGO現地スタッフ、大学教授等)や、過去に日本に留学経験があった関係で逃れてきた学生たちは今回は含まれず。
日本での年間の難民認定、2021年は74人でした。今回はそれを上回る異例の難民認定数になります。
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とはいえ「74人」で過去最多だったのです。難民条約に加盟している先進諸国を見渡すと、そもそも日本の認定が少なすぎた現状は周知のとおりです。
これまでアフガンから日本に逃れてきて戻れない人々は、特別な措置で期間限定で滞在を許可(つまり不安定だった)されていましたが、今回認定された人たちは長期で安定的な滞在ができるようになりました。
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難民認定されると「定住者」という安定した在留資格を得られます。認定されることの最も大きな意味の1つでもあります。そして、まだ危険地にいる家族を呼び寄せることも可能になります。ただ、この呼び寄せ、認定者の「未成年の子ども」「父母」のみなのです。例えば、20歳を超えたお子さん、一緒に暮らしていた姪、祖父母、などは呼ぶ手段がありません。
昨年退避してきて以降、上記の特別な措置で日本にどうにかいられる状態にはなりましたが、政府が提供する日本語教育、就労支援、住居の確保等はほとんどありませんでした。特に、家族で避難しているケースに本来必要だったのは子どもの教育支援。学齢期の子どもたちは3月まで学校に行けず、15歳以上の子どもたちは今も学校に行けていないという報告も。
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今回、認定された方々は、日本で安心して暮らせる法的地位を得ました。もちろん大きな前進です。しかし、ここまでの政府の対応については見直す必要があるでしょう。そしていよいよここから。言葉も文化も異なる新しい土地でどうそれぞれの人生を切り拓くか、子どもたちは未来を紡いでゆけるのか。
政治的混乱が続くミャンマーや侵攻が続くウクライナから逃れてきている人々、コロナ前から「難民申請者」として待ち続けている人々を含め、今後の日本全体の認定の方針に影響か?
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通常、平均4年かかるとも言われている難民の審査。人はこんな長い期間ただ待たされると、心身ともにボロボロになります。就労許可を得られてどうにか生計を立てられればいいほう。在留資格も得られない人々も。昨年、改正入管法は事実上の廃案となりました(3回目の難民申請が不認定になったら強制送還が可能になるという変更を始め、人権上の課題が多かった)。秋の入管法改正の議論の方向性にも注目が必要です。
・ビザの発給要件緩和
いまも現地におり、一刻でも早く避難したいと思っている日本に繋がりのあるアフガニスタン人やその家族がいます。希望する人へのビザ発給の緩和が必要です。(ウクライナ避難民にはできたように)
・認定されていない人への支援
すでに日本に退避しているものの、今回の難民認定を得られなかった多くの人々やその家族たちも、政府からの生活支援や教育支援を必要としています。
・支援者への支援・助成
個人で支える保証人や支援者、呼び寄せた大学、支援団体も、先が見えない中、持ち出しでどうにか支えている状況です。(アフガン避難民には財団等の支援も手薄です)
全国難民弁護団連絡会議から法務省・出入国在留管理庁に宛てた「在アフガニスタン日本大使館職員及びその家族の集団的難民認定に対するコメント」を紹介させていただきます。
今回、認定されたのは日本政府が管轄の大使館職員。しかし、政府は民間の退避者(大学やNPO・NGO、個人経由)に関しては身元保証人に生活費の支弁を要求している状態です。身元保証人の長引く負担を少しでも解消するために現在行われているクラファンもあります。(社会福祉法人ISSJ)
私たちNPO法人WELgeeでも「日本での人生の再建」に焦点を当てて、祖国で培ってきた経験や個性、専門性を活かし日本で活躍できる方法を「就労」を軸に作っています。サポーターとして支えてくださる方々の応援で、日々増えてゆく相談に対応している状況です。新しい地で生きてゆく。時間がかかるのは、ここから。(仲間を募集しています。)
こちらのNHK記事の中で以下のような記載がありました。
一点、勘違いしてはいけないことがあります。
「難民認定」は、"日本のために働いてくれたから"、という配慮による在留特別許可でもなければ、"恩恵"でもありません。日本政府のために働いたわけではない人でも、審査の基準に則って公平に審査される必要があるものです。
命の危険に直面し、祖国を逃れざるを得ない状態に陥った人々が日本の門を叩く時、日本はどう対応するのか?どうにか命を繋いだにも関わらず、疲弊してゆく人々が大勢います。
ここまで、関心をもって読んでくださりありがとうございました🫱🏼🫲🏾
支援者さんが行うクラウドファンディングに参加したり、就労先を探す難民の人の採用を検討したり、地域の日本語教室ボランティアに登録したり、SNSでニュースをシェアしたり、家族と話したり、なにかしらのアクションをぜひ起こしてみてください。
私たちは、いつも社会の変化の真っ只中にいます。社会を変えてゆくのも私たちひとりひとりです。
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本記事は、快適すぎて動けなくなる魔法のソファ「Yogibo」のスポンサーにより作成をされました。