改正入管法に対するWELgeeの声明文
先月、閣議決定がなされた「改正入管法(出入国管理及び難民認定法)」が、現在国会で審議されています。2021年に国会に提出された改正入管法は廃案となりましたが、2年経った今年3月、再び国会に提出されました。難民・難民認定申請者に関わるWELgeeとしては、政府から提案された改正案には重大な懸念があると考えています。
入管法は、難民のみを扱うのではなく、日本に出入国する全ての人の出入国と、在留する全ての外国人の公正な管理、そして、難民の認定手続きを整備することを目的に存在しているものです。今回の改正目的のひとつに入管庁は、「不法滞在(非正規滞在)の外国人が入管施設で長期収容されている問題の解消、退去を命じられた外国人の速やかな送還」を掲げています。この改正案について、先週末から、自民・公明両党と、立憲民主党、日本維新の会の与野党4党の衆議院法務委員会による修正協議(*1)が行われています。野党側の求めを踏まえ、与党側が修正案を示して、各党が持ち帰って検討することとなっています。
今回、市民・当事者・支援団体・弁護士などから、最も問題として声が上がっているのが、「難民認定申請中の人であっても、3回目の難民認定申請後は出身国に強制送還できるようになる」という部分です。そもそも今回の改正案を入管庁が提出した理由は「送還忌避者=何度も難民認定申請して、日本に留まる人たちに対応する」ということなのですが、何度も難民認定申請をする人の中には、難民として本来認定されるべき状態でありながら、不認定となり、不安定な法的地位にいる人々が含まれます。
NPO法人WELgeeが現場で関わっている方々の中にも、難民該当性が高い一方で、一次審査で不認定となり複数回、難民認定申請をせざるを得ない方々がいます。先月、難民認定されたウガンダの女性も、命の危険がある祖国に帰れないという主張でしたが、一次審査では不認定になり、その後の裁判段階で認定されました。また、6~7年、難民認定審査のインタビューに一度も呼ばれない状態で待ち続ける方々もいます。
難民・難民認定申請者に関わる団体としては、まずは「保護すべき者を確実に保護」できる法制度にすることが重要だと考えます。事実、2010〜2021年の間に難民認定をされた人のうち、一度は不認定となり、退去強制令書が発付された人数が48名、複数回申請をしていた人数は25名にも上ります(*2)。
日本の難民認定制度の改善に向けては、2021年の段階から野党案として提出されていた「入管庁から独立した難民審査機関」を創設する案にWELgeeは賛同します。この独立した機関ができることにより、十分な専門知識を持つ職員が、難民として認定すべき人、難民条約上の難民には当たらないが補完的保護などの概念の中で保護すべき人を判断できるようになるはずです。同時に、難民としては認定ができない・するべきではない人も、明確に判断ができるようになります。
命の危険があって逃れてきた人を保護できるようになる。それができるようになって初めて、出入国管理の観点から、退去に応じない人々にどう対処するかを話し合えるようになります。
外国人の在留の適正な管理をもって日本社会に資することを職責とする入管庁側と、難民や外国人の方々に寄り添う形で一人ひとりの人生と人権を大切にする市民団体側、双方の視点と試行錯誤が尊重されるかたちで、日本でも建設的な「入管法改正」が進むことを願います。
2023年4月25日 NPO法人WELgee
*1 「修正協議」とは、与党が出した入管法改正案に対し、修正が必要だという声に応じて、修正をする協議のことです。
*2 難民支援協会『難民・難民申請者を送還するということ難民・難民申請者を送還するということ』(最終閲覧日2023年4月17日 https://www.refugee.or.jp/report/refugee/2023/03/deport23/)