「他者やコミュニティのために貢献を続けたい。」その思いを胸に日本でも挑戦を続けるマーケターNさん。【Meet Refugee Talents!! ~世界の激レアさんをご紹介~】 Vol. 5
「人々の暮らしを自分の仕事によって支えたい。自分だけでなく、自分が属するコミュニティのために何か意味のあることをしたい。」
「あなたの夢は何ですか?」という問いにそう答えたNさん。言葉の端々から「人のために」という想いをにじませる彼が、その夢を抱き、目標に向かって歩んできた半生とはどのようなものだったのでしょうか。
Nさん。1991年生まれ、30歳。東アフリカ出身。母国でマーケティング・マネジメントの学士号を取得。市中銀行でカスタマーサービス担当として勤務する傍ら、ウェブメディアの立ち上げも経験した。2018年、政情不安のため来日し、難民申請中。2020年には日本でMBAも取得。
ーどんな環境で育ちましたか?
「大学入学のために実家を出るまでは、周囲を山に囲まれた小さな都市で家族と暮らしていました。12歳くらいの時から数年間は、両親の知り合いの児童養護施設で暮らしたこともあります。両親の家の近くだったので、施設と実家を行き来しながら過ごしていました。」
▲Nさんの母国の風景。山に囲まれた美しい地域。
ー児童養護施設で過ごした時間はどのような経験でしたか?
「幼少期に児童養護施設で過ごした経験は自分の価値観を形作っていると思います。
100人ほどの、経済的に余裕がない、または親をなくしている子どもたちに囲まれて過ごしました。施設にいた子どもたちは、ほとんどが同じ国籍、宗教、民族でしたが、それでも多様なバックグラウンドを持つ人ばかりでした。そこで多様性の中で他者と調和して生きるということを学びました。母国は豊かな国ではありませんから、リソースを他者と共有しなければならない環境にあり、他者への思いやりを持つ文化があると思います。児童養護施設での経験を通して、他者、特に社会・経済的に弱い立場にいる人たちには貢献するものだというマインドセットが、私にはより強固に身についたと思います。」
高校卒業後、Nさんは母国の歴史あるトップ大学の一つに入学し、マーケティング・マネジメントの学士号を取得されました。
ーなぜマーケティング・マネジメントを学ぼうと思われたのですか?
「アフリカを含む発展途上国では、未だ貧困が大きな課題の一つです。そのため、経済成長が母国の発展のための唯一の道だと考えました。経済が発展すれば、より多くの人が清潔な水にアクセスでき、栄養のある食事ができ、学校にも通うことができます。また、経済的な不均衡は資源を巡る争いの火種にもなっています。母国が貧困状態から脱して豊かになれば、多くの問題を解決することができると考えました。
高校でビジネスに関する授業を受講し、自分で大学の学部学科や教職員について調べる中で、ビジネスを学びたいと思うようになりました。経済という観点から社会に貢献するため、マーケティング・マネジメントを勉強しました。」
ー大学でのマーケティング・マネジメントの勉強に加えて、課外活動もされていたんですよね。
「Marketing Management Associationという団体で代表を務めていました。ファンドレイジングを通した経済的に余裕のない生徒への金銭的な援助や、補習のための勉強会の開催等を行う団体です。活動に対して協賛企業を得ることもできました。私はリーダーとして、メンバーのタスク管理や、コミュニケーションを円滑に測るた目のサポートを行いチームをまとめる役割でした。」
▲大学時代のNさん。Marketing Management Association代表として働いている様子。
ーリーダーシップをとった経験もあるのですね!大学卒業後は何をされていたのですか?
「数ヶ月間地元企業の営業職として働いた後、母国の市中銀行のカスタマーサービスを担当する部署で約3年間働きました。お客様の銀行口座の管理やお客様対応などを行いました。ビジネスについての知識が身につきましたし、業務に生かすためにビジネス関連の書籍や雑誌を読んで自ら勉強に励んだこともとても楽しかったです。
銀行での業務と並行して、母国や世界のニュースや最新情報を英語と母国語で伝えるオンラインメディアを創設し、運営していました。母国の市民が世界に興味を持つことができる公正なコンテンツを届けたいという情熱のもと起業しました。
ウェブサイト/SNS(Facebook、Twitter、Tumbler、Pinterest、LinkedIn、Telegramなど)のコンテンツ作成やWordpressやAlexによるサイト訪問者の分析等を担当していました。サイト訪問者を増やすための戦略構築を考え、効果的な記事を作成し、SEO対策等の工夫をした結果、サイト訪問者数を増加でき、ウェブサイトには1000人/日の訪問者を、Facebookページには約23万人のフォロワーを獲得することができました。また、GoogleアドセンスやTaboolaによる広告収入で、月に7000ドルほどの収入を得られるようになりました。」
ーデジタルマーケティングやSNSマーケティングのスキルもお持ちなのですね。母国の人々ために、自分にできることを着実に実行されてきた姿に胸を打たれます。しかしその後、2018年に来日されました。
「2018年頃から母国の政情がより不安定になりました。その時まず母国から逃げなければならず、とりあえず渡航できた場所が日本だったのです。」
ー日本での生活はいかがですか?
「日本に住むことになるとは想像していませんでした。しかし、日本に住んでみて日本のことが好きになりました。自分を気にかけてくれ、困った時には助けてくれるようないい人がとても多いところが好きです。友達もたくさん出来ましたし、アルバイト等を通して日本の風習や文化にも慣れてきました。」
ーWELgeeメンバーともすぐに打ち解け、積極的にWELgeeの活動に参加してくださっていますよね。また日本でMBAも取得されました。未だ大変な状況の中挑戦を続けるNさんが、今後日本、そして世界で達成したい夢について教えてください。
▲NさんのMBAプログラムでの様子。
「日本を含め、自分のいるコミュニティに貢献することに情熱を持っています。特に国際ビジネスや金融、銀行業に興味はありますが、それらに限りません。人々の暮らしを自分の仕事で支え、他者やコミュニティに何か意味のあることをしたいと強く思っています。」
「人のために働きたい」という想いに溢れたNさん。母国で、そして日本で、自身の夢に向かってひたむきに努力し、自分自身の手で着実に道を切り開かれてきました。今後のNさんの活躍に期待します!
WELgeeでは、難民人材に特化した伴走型人材紹介サービス『JobCopass』を通じて、Nさんのように「難民」と呼ばれる人たちが、これまでに培ったスキルと経験、あふれる情熱や志、逆境の中でも道を切り拓き、挑戦を諦めないタフネスを活かして、日本の企業に貢献できる仕掛けをつくっています。
「Nさんのように志と情熱あふれる難民の人たちと交流してみたい」
「どんなスキルや経験をもつ人たちがいるのか詳しく知りたい」
「自社や知り合いの会社のニーズと照らし合わせてみたい」
ご関心がある方は、是非お気軽にお問い合わせください!
問い合わせ先: nana@welgee.jp|WELgee 就労伴走事業部・山本菜奈